最近は幼稚園の先生や保護者、家庭ではお父さんが鬼になって豆を撒き、その後みんなで豆を食べるというのが、一般的な節分の行事になっています。
子どもの頃は、豆撒きせずに逃げ回って鬼を怖がったり、豆を食べすぎて、「年の数だけ食べるんだよ」と注意されたり、何となく行ってきた節分の行事でしたが、元々節分とはどのような行事だったのでしょうか。
節分がどのように始まり、日本の行事として定着していったのか、なぜ豆を食べるのか等々、解説していきます。
節分の由来は?
節分と言えば、「鬼は外、福は内」と唱えながら豆をまく行事として定着していますが、もともと節分の行事は、方相氏(ほうそうし)と呼ばれる鬼神が、疫病や悪鬼を矢などで追い払い、邪気を祓う中国の行事「追儺」(ついな)に由来します。
日本では、文武天皇の時代(706年)に疫病が蔓延し、多くの農民が亡くなったときに追儺を行なったのがはじまりとされています。
平安時代の宮中では、大晦日の行事として、旧年の厄や災難を陰陽師によって、お祓いし清めていました。その時に行われていた「豆うち」という行事が、室町時代以降に豆をまいて悪鬼を追い出す行事へと発展し、庶民の間でも行われるようになりました。
節分は、季節が移り変わる節日を指します。旧暦では、春から新しい年が始まるため、もともと大晦日に行われていた行事でしたが、立春前日の節分の日に行われるようになりました。
豆をぶつけて追い払う鬼ですが、鬼は実体はなく、邪気や厄など怖いものや嫌なものの象徴とされてきました。霊のように見えないものを指す「穏」(おん)から「鬼」に転じたともいわれていて、災害、病気やケガ、飢餓など人間がどうすることもできない災厄を「鬼」ととらえていました。
元々は目に見えない悪い鬼を、方相氏と呼ばれる鬼の神様が追い払う行事でしたが、いつからか豆を撒かれて追われるのは、目に見える鬼へと変化していきました。
なんだか追われる立場になってしまった方相氏が気の毒にも感じてしまいますね…。
どうして豆を投げるの?
豆を投げるのは、鞍馬山の鬼退治の際に、毘沙門天が「目に豆をぶつけるといい」と助言したという伝説によるもので、鬼の目(魔目)に豆を投げつけることで「魔滅」になるという語呂合わせではないかといわれています。
また、農耕民族である日本人は、「五穀」には災いを祓う霊力があると信じてきました。五穀の一つである豆に宿った穀霊の「魔除け」の力で災いを追いやろうとしたために、豆を撒くようになったともいわれています。
豆を煎るのは「魔目を射る」に通じるためです。
柊鰯(ひいらぎいわし)って?飾る理由は?
現在は目にすることも少なくなってきていますが、節分時に、玄関先や軒先に、焼いたイワシのお頭を柊の枝に差して立てているものを見かけます。
これは、「柊鰯(ひいらぎいわし)」と呼ばれて、魔除け・厄除けの役割をします。
柊のトゲで鬼の目を刺し、鬼が嫌がる鰯の臭いと、焼いた時の煙で鬼を追い払うためと言われたり、または反対に、鰯の臭いに釣られて家に寄りついた鬼の目を柊のトゲで差すためとも言われたりします。
地域によっては、柊と鰯に豆の枝を添えるところもあるようです。また、鬼を追い払ういやな臭いを出すため、にんにくやネギ、らっきょうを添える地域もあります。
西日本では、柊鰯を「ヤイカガシ(焼嗅がし)」とも呼びます。
すべての鬼が悪者じゃない?鬼を祀る神社も
一般的には「鬼は外、福は内」と大声で叫びながら豆を撒きますが、地域やお寺、神社によっては、鬼を悪者としない場合もあります。「鬼は外」とは言わず、「福は内」と叫ぶところもあります。
もともと節分は、先ほど記述した通り、方相氏(ほうそうし)と呼ばれる鬼神が疫病や悪鬼を矢などで追い払い、邪気を祓う中国の行事が由来しています。悪鬼を退治する鬼の神様、まさに良い鬼でした。それがいつからか、魔物ととらえられるようになりました。
一方、正月行事として行われる修正会(しゅしょうえ)には、良い鬼がでてくる場合もあり、「災厄を追い払って、春を呼ぶ鬼」として登場するようです。
※修正会…毎年年始に寺院で、その年の天下平安や人々の幸福を祈って行われる法会
秋田のなまはげも元来は、神の化身で祝福をもたらす鬼と言われています。現在も、鬼神(きしん)を祀っている神社は日本にも残っていて、青森県弘前市には、「鬼神社」があり、鬼が人間の為に水路を作り、田んぼに水を引いてくれたというお話も伝えられています。
ほかにも、名字に「鬼」が付く家庭では、鬼を追い出すと縁起が悪いので「鬼は内」と言う事が多いようです。
また、平安時代の武将・渡辺綱が鬼を退治したということで、渡辺一門には鬼が怖がって寄ってこないという言い伝えがあります。そのため、渡辺(渡邊・渡邉)姓の家庭では豆まきをしなくても良いとか?
豆まきのやり方は?
まず豆まきは大豆を煎って、邪気を祓い福豆を準備します。それを、マスなどに入れて神棚に供えます。
日が落ちたら、その年の干支生まれの男性か家の主が、「鬼は外、福は内」と大きな声で唱えながら豆をまきます。
現在は、ほとんどの家庭では、一家の主が鬼になって豆をまくことが多いと思います(笑)。
撒いた豆は、年の数だけ食べると、年齢と同じ数だけ福を体に取り入れるという意味があります。また、年齢よりも一つ多くの豆を食べた方が良いとも言われていますが、これは翌年の邪気も祓い、病気に負けない力をもらうためです。
どちらでも良いと思いますが、翌年への願いも込めて年齢より一つ多く食べると良いかもしれません。
各地の社寺でも毎年豆まきが行われていますが、福豆だけでなく、お菓子やお金を包んで巻いたりする地域もあるようです。毎年大きな神社では年男、年女の有名人が豆まきをしている光景をよく目にしますね。
豆まきに使う豆は?
豆まきに使う豆ですが、私は子どもの頃から節分には落花生をまくものだと思っていました。調べてみると、北海道や東北地方、信越地方、九州の一部地域で落花生を撒くようです。
雪が多く降る地域で落花生が使われている印象ですが、これは「雪の中でも落花生が拾いやすいという理由」で、北海道から広まっていったようです。確かに、落花生だと大きいので雪に埋もれても見つけやすいですね。
また、落花生は秋冬の食べ物でカロリーが高いことから、寒い地域で好まれるようです。理にかなっていますね。
九州の一部地域で落花生が使われるのは、鹿児島に落花生の産地があるからということでした。
感染症や流行しているこの時期、落花生が衛生的にも良いかもしれません。
まとめ
巷では、鬼滅の刃が大人気となっていますが、昔から人々は鬼の存在を身近に感じ、目に見える鬼・目に見えない鬼の存在を恐れ、気にしながら生活していたことがわかります。
形が変化しながら現代にまで受け継がれている節分。最近では、その年の年神様のいる吉方を向いて恵方巻を食べるのも、節分のイベントとして定着しつつあります。
旧暦では一年の始まりとされる節分に、厄やウィルス、災い、そして自分の中にあるネガティブな気持ちなど、目に見えない鬼を退治するつもりで豆まきをして、良い一年が始まることを願ってみてはいかがでしょうか。