初午と聞いて、皆さんはどんなことが頭に浮かびますか?
稲荷神社へ参拝にいったり、いなり寿司を食べる家庭もあると思います。
私の住む地域では、初午の日には消防団の出初式が行われ、消防団による消防演習があります。消防団員が各家庭を回って火の用心を呼びかけ、お札を配る地域もあるようです。
初午とはどんなことをする日なのか、消防と関係があるのか。そもそも初午の日って何でしょう?初午に関する疑問を詳しく解説していきます。
初午とは!?
2月の最初の午の日を初午と言いますが、一般的には、初午の日に行われるお祭りや風習などの行事を指して初午ということが多いようです。
和銅4年(711年)2月の初午の日に、伏見稲荷大社に神様が降りた日ということで、全国の稲荷神社では祭礼が行われます。
2月の2回目の午の日を二の午(にのうま)、3回目を三の午(さんのうま)と言い、これらの日にも祭礼を行う地方や、二の午もしくは三の午にのみ祭礼を行う地方もあります。
赤い鳥居が目印の稲荷神社の信仰は、豊穣から商売繫盛、家内安全など多岐にわたり、人々の間で人気があったので、全国に約30,000ほどの稲荷神社があると言います。
2月の最初の午の日が初午なので、日付は毎年かわります。
2021年 2月3日(水) 2022年 2月10日(木)2023年 2月5日(日) 2024年 2月12日(月) 2025年 2月6日(木) 2026年 2月 1日(日)
そもそも初午の日って何!?干支と関係?
初午の日の「午」は、十二支の一つである午のことです。
1年ごとに「子丑寅卯辰…」というように、十二支が変わるのは誰もが知っていると思いますが、干支は年だけでなく、月や日、方位などにも使われています。
ここでは、干支について詳しく説明していきます。
『干支(えと)』というのは『十干(じっかん)』と『十二支』を合わせた60通りの組み合わせのことを指します。
十干を知っている人は少なく、十二支=干支と思っている人が多いかと思います。
十干は10種類の要素から成り立っています。
甲(こう)、乙(おつ)、丙(へい)、 丁(てい)、戊(ぼ)、己(き)、 庚(こう)、辛(しん)、 壬(じん)、癸(き)
『甲、乙、丙』は割とよく知られていますね。昔の通知表は甲・乙・平を使って評価していた学校も多かったようです。
そしてこの十干を五行の、木(もく、き)・火(か、ひ)・土(と、つち)・金(こん、か)・水(すい、みず)に2つずつそれぞれ当てはめて、さらに陰陽を割り当てます。日本では陽に兄(え)、陰に弟(と)を使って表します。
十干 | 五行 | よみかた |
甲 | 木の兄 | きのえ |
乙 | 木の弟 | きのと |
丙 | 火の兄 | ひのえ |
丁 | 火の弟 | ひのと |
戊 | 土の兄 | つちのえ |
己 | 土の弟 | つちのと |
庚 | 金の兄 | かのえ |
辛 | 金の弟 | かのと |
壬 | 水の兄 | みずのえ |
癸 | 水の弟 | みずのと |
年の干支
上記で説明した通り、干支は60の組み合わせがあり、甲子(きのえね)、⇒乙丑(きのとのうし)⇒丙寅(えのひとら)⇒丁卯(ひのとのう)⇒戊辰(つちのえたつ)…というように順番に進み、60年で一巡します。
60歳を「還暦」というのは誰もが知っていると思いますが、還暦とは干支が一巡して自分の誕生年の干支に還ることを意味します。
十干は、西暦の一の位が0の場合は庚(かのえ)で、そこから順番にあてはめていきます。そうすると、2020年は「庚子(かのえね)」で、2021年は「辛丑(かのとうし)」となります。
0…庚 1…辛 2…壬 3…癸 4…甲 5…乙 6…丙
7…丁 8…戊 9…己
月の干支
月も年と同じように、『十干』と『十二支』を組み合わせて表現しますが、十二支は寅(とら)からはじまります。
正月…寅 2月…卯 3月…辰 4月…巳 5月…午 6月…未 7月…申 8月…酉 9月…戌 10月…亥 11月…子 12月…丑
月の干支は固定されていますが、これは旧暦の月なので新暦とは1か月ほどのずれがあり、ひと月の始まりは二十四節気になっています。
年は60年で1巡でしたが、月は60ヶ月(5年)で1巡します。
2020年12月7日(大雪)~2021年1月4日 戊子
2021年1月5日(小寒)~2021年2月2日 己牛
2021年2月3日(立春)~2021年3月4日 庚寅
2021年3月5日(啓蟄)~2021年4月3日 辛卯
2021年4月4日(清明)~2021年5月4日 壬辰
2021年5月5日(立夏)~2021年6月4日 癸巳
2021年6月5日(芒種)~2021年7月6日 甲午
2021年7月7日(小暑)~2021年8月6日 乙未
2021年8月7日(立秋)~2021年9月6日 丙申
2021年9月7日(白露)~2021年10月7日 丁酉
2021年10月8日(寒露)~2021年11月6日 戊戌
2021年11月7日(立冬)~2021年12月6日 己亥
2021年12月7日(大雪)~2022年1月4日 庚子
日の干支
ここでようやく初午の日とはなにかという本題に入りますが、日の干支も年の干支と同じように順番にあてはめていきます。日の干支は60日で1巡します。
日の干支を知るには、日にちを遡っていくしかありませんが、便利な干支カレンダーを利用すると、簡単に調べることができます。(自分で割り出したい方は、計算方法もあるようです…)
初午の日の「牛」とは、干支の午を指すことが分かったと思います。
なぜ1月ではなく2月最初の午の日が初午なのかというのは、旧暦では立春(2月4日頃)が一年の始まりとされていたためです。
初午には何をするの?
稲荷神社をお参りする
午の日には、全国で稲荷神社で祭礼が行われたり、稲荷神社へお参りをしたりします。
稲荷神社には、稲を象徴する穀霊神・農耕神「稲荷神」が祀られており、その神様にお参りをして、五穀豊穣を祈ります。
稲荷神は、もともと五穀豊穣の神様ですが、現在では、商売繁盛・家内安全・開運祈願など、さまざまなご利益をもたらす神様として、信仰を集めています。
稲荷神社といえばキツネを思い浮かべると思います。稲荷神社の神様はキツネの神様だと思っている人が多いようですが、キツネは稲荷神の使いとされています。
消防団員の出初式や火の用心の呼びかけをする地域も
初午の日に、消防団員が各家庭を回り、火の用心を呼びかけ、火の用心のお札を配るところもあるそうです。私の住む地域のように、消防の出初式を行う所もあるようです。
この日に火の用心を呼びかけるのは、女キツネをめぐって2匹の男キツネが争い、負けた方のキツネが火を放ち、村人を困らせたという言い伝えによるものとされています。
また、4月初めの巳の日の菜の花祭りの夜か、初午に雨が降らないと、火に祟られるとか、初午の早い年は火事が多いという言い伝えからだそうです。
これらは、昔から言われている俗信により、続けられている慣習のようです。
いずれにしても、火の取り扱いには十分に注意しましょう。
初午にいただくものは?
いなり寿司
昔は、キツネの好物はネズミの油揚げとされ、キツネを捕まえる時にも、ネズミの油揚げが使われていたと言います。
しかし、殺生はタブーとされたため、豆腐の油揚げを稲荷神に供えるようになり、豆腐の油揚げがキツネの好物になったと言われています。
その油揚げに、稲荷神のおかげで実ったお米を詰めるようになり、「いなり寿司」や「おいなりさん」と呼ばれるようになったと言います。
東西でいなり寿司の形状は違います。東日本では、米俵に見立てた俵型をしていますが、西日本ではキツネの耳に見立てた三角形が主流のようです。
また、東日本では「いなり寿司」、西日本では「おいなりさん」と呼ぶことが多いようですが、「きつね寿司」「こんこん寿司」「揚げ寿司」「いなり」など、地域によって様々な呼び方があるようです。
(私は東日本ですがおいなりさんと呼ぶので、地域というより家庭によるのかなと思います。)
初午だんご
主に養蚕の盛んな地域では、初午に蚕の神様を祀る行事も行われたため、繭がたくさんできるように願い、繭の形に作った団子を供えるといいます。
汁物やぜんざいに入れたり、焼いて醤油などで味を付けて食べたりするそうです。
しもつかれ
栃木県を中心に北関東でみられる郷土料理で、初午に藁を束ねて作った「わらづと」に入れて、赤飯といっしょに稲荷神社にそなえます。
鬼おろしですった大根やにんじん、鮭の頭、油揚げ、大豆、酒粕などを
煮こんだもので栄養満点の食べ物です。
「七軒の家のしもつかれを食べると病気にならない」ともいわれていて、近所の人たちと分け合って食べることが多いそうです。
旗飴
奈良県でみられる飴菓子です。旗を巻き付けた棒の先に飴をつけたもので、商売をしている家が稲荷神社に供えます。飴をもらうために、子どもたちが商売をしている家を「旗飴ちょうだい」とまわるハロウィンのような風習もあるようです。
まとめ
初午の日が一般的によく知られていますが、実は初午だけでなく、すべての十二支に「初」をつけて催事が行われています。
昔からの慣習で行われている行事や、何気なく食べられている物にも、それぞれ意味があることが分かったと思います。
今年の初午の日には、様々なご利益があると言われている稲荷神社に参拝して見たり、いなり寿司を食べたり、日本の風習を取り入れてみてはいかがでしょうか。